ミスが許されない証券市場で、プレッシャーから人を解放する―証券企業におけるRPA活用

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経済や景気の影響を受け、変化に対応し続けなければならない証券業界では、かつては従業員のハードワークや長時間労働によって高い品質を保つことが求められてきました。そんな証券業界でも、ITを活用した働き方改革に取り組む企業が増えています。証券企業でRPAを導入したことで、従業員をストレスの高い緻密な作業から解放し、より付加価値の高い業務に集中できる環境を整えられたという事例があります。

9月5日(木)、ベルサール日本橋にてUiPathユーザー会証券分科会が開催されました。証券業界では初めてのユーザー会となる今回は、約30の企業の皆様にお集まりいただきました。UiPathのRPAを導入・ご活用いただいている野村ホールディングス、東京証券取引所の2社に導入事例をご紹介いただいたほか、当社製品最新バージョンによる新機能のご紹介、RPA導入に関する課題についてのグループディスカッションなどを実施しました。

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自身も金融業界で長いキャリアを持つCEOの長谷川は、あいさつで証券分科会への思いを語りました。

「私は15~6年にわたりアセットマネジメントや銀行・証券の業務に携わっていたので、今日のユーザー会はホームグラウンドに帰ってきたような気分です。初めてRPAを見た時、証券の緻密な処理が要求される業務やシステムに十分対応できる、破壊力のあるツールだと思いました。当時日本で使われていたツールは、エクセルの代わりをするだけだったので、メインフレームなど基盤のシステムとも連携できれば、業務効率化を達成できる可能性があると感じたのです。これを日本にも広げ、製造業やサービスにも広めたいというのが最初の想いでした。 

RPA導入にあたっては、様々な課題があると思います。導入後にスムーズに規模を拡張していくためのプロジェクト体制。どうやって投資をすればちゃんとした効果が出るか。どういう業務を対象に使うか。内製化して効果を上げるには何が必要か、など。様々なお客様の経験に基づいた意見を伺い、皆さんで共有できる会になることを期待しています」 

ROIにこだわるよりもまずは高付加価値業務を生み出す環境づくりを

ユーザー主導の展開で多品種開発を実践した野村ホールディングス

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まずは2016年より野村ホールディングスのファイナンス部門でRPAの取り組みを行っている小野田氏に発表いただきました。

「RPA導入の際にまず議論したのは、『高付加価値業務』と『ROI』のどちらを重視するのか、という点でした。業界の競争で勝ち残るには他社との差別化を図らねばなりません。そこで不可欠になってくるのが、従業員の業務負担を削減したうえでの高付加価値業務へのシフトです。なので、当初はROIを過度には重視せず、高付加価値業務を生み出すための環境をつくることを目的としてRPAの開発を進めました」と小野田氏は語ります。

当プロジェクトの特長は、IT部門ではなくユーザー部門が主導で開発を進めた点です。ユーザーへのヒアリングを基に要件を発掘し、それに則したロボットを次々と作成。実際に業務時間が削減されたことで、ユーザーからはロボットをさらに改善してほしいという声があがり、より高度なロボットの開発に繋がるという好循環が生まれました。

最後に小野田氏は、RPA導入のプロセスを飛行機のフライトの飛行計画、テイクオフ、安定飛行という3つのフェーズに例えてまとめました。

「当社のプロジェクトでは、導入計画を経てRPAを実装し、テイクオフ期間には小さく多品種のロボットの開発をスピーディーに進め、1年間でロボットの総数は約3倍になりました。安定飛行に入った現在は、これまでの小さな案件で蓄積したノウハウを集積して、大きな案件でROIを極大化するための開発に取り組んでいます」

RPAは人員削減のためのツールではない。ストレスを軽減し、業務の質的改善や高度化を図る

全社横断RPAプロジェクトで主体性のある自動化を推進した東京証券取引所

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続いて登壇いただいたのは、東京証券取引所の神倉氏。同社では2017年にRPAの導入検討を開始し、2018年に本格的に導入しました。体制構築からガバナンスの整備、具体的な取り組みなどについて、プロジェクトの発足から現在にいたるまでの足跡を共有いただきました。 

神倉氏はRPA導入を決めた経緯についてこのように語ります。

「当社では業務の性質上、かなりの緊張感をともなう作業が多くあります。そのような中で従業員のストレスを軽減し、より良いパフォーマンスを発揮できる環境を作ることを目的としてRPAの導入を決定しました。何よりも重視したのは、『RPAは人員削減のためのツールではない』という共通認識を持った上で、業務プロセスの見直しを前提とした自動化で、業務の質的改善や高度化を図ることを目指しました。」 

導入にあたっては、社内調整を行うコーポレート部門と、現場を熟知したIT部門でプロジェクトチームを結成。さらに各業務部署にも参画してもらい、全社横断の体制でRPAの導入を進めました。自動化する業務の選定については社内アンケートで集まった要望から業務の棚卸をして、自動化による効果が大きそうなものを絞り込んだといいます。

「ポイントは、本当に自動化が必要なのかを吟味することです。その他の対応で改善が期待できそうなものは別の策を取るなど、あくまでも『今の業務の見直し』に重点をおいたRPA化を進めました。」と神倉氏は続けます。

「開発体制も、自部署開発と事務局委託によるハイブリッド方式を採用しました。部署間、社員間のITリテラシーの差をカバーし、部署の属性に合わせた開発ができるようするためということもありますが、各部署に当事者意識をもってもらい、主体性を促進することが一番の目的でした。」

本格導入に際しては、ハンズオンセミナーやガイドラインの整備も実施。部署内にRPA担当社員を任命したり、ナレッジ共有のためにポータルサイトで全社員に共有したりするなど、社員のモチベーションを維持できるような工夫もこらしました。

「小さな成功事例を早期に生み出し、現場レベルで共有することで取り組みやすさを感じてもらうことが大切だと感じたからです。」と神倉氏は語ります。 

このような取り組みを経て、現在ではRPAの使用により年間でおよそ10000時間の削減が見込める状態に。RPAの取り組みの現状について、神倉氏は次のようにまとめました。

「今はまだROIの追求ができる段階ではありませんが、社員が十分なパフォーマンスを発揮できる環境をつくることを最優先事項にしています。社員アンケートでもRPAの満足度は非常に高く、効果があがっていると感じています。」 

2社の事例で共通しているのは、RPAを「人員・コスト削減のツール」としてではなく、「従業員の業務支援、パフォーマンスや生産性向上のためのツール」として使用したという点です。ROIが見込めないからといって諦めるのではなく、まずは従業員の業務負担を軽減することに軸足を置いてプロジェクトを推進し、従業員がより高付加価値の業務に着手できる環境づくりをすることが、結果的に企業の成長につながる自動化の秘訣だということがわかります。 

ユーザー同士がつながるオープンなプラットフォームを目指して

さらに、今回のユーザー会では導入事例の共有だけでなく、常に当社製品の最新の情報に触れていただけるよう、製品の最新機能や技術のご紹介も行いました。今回も講演の合間にUiPath最新バージョンの機能紹介やUiPathのAI Computer Vision(AIによる視覚情報の理解)を用いたデモを行いました。

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プログラムの最後には、少人数グループに分かれて「RPA技術者の教育やプロジェクトの推進体制について」「RPA対象業務をどのように把握するか」といったテーマでディスカッションを実施。同じように自動化のプロジェクトに取り組んでいる企業の話を聞いて意見を交換できる絶好の機会ということもあり、積極的な議論が交わされていました。

このようにユーザー会は同じ業界や業種のユーザー同士が交流して、情報を共有したり意見交換を行えるプラットフォームとしての役割も果たしています。UiPathではこれからもユーザー会を通してユーザー同士のコミュニティを強化し、さまざまな業界のデジタルトランスフォーメーションや働き方改革の推進に貢献していきたいと考えています。 

UiPathユーザー

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