昨年より話題となっている「AIエージェント」。本格的な活用に期待が高まっているこの時期、同テーマについて深掘りしておくことは大いに意味があるはず。そこで、UiPath Product Marketing Managerの山崎 麟太郎が「AIエージェントを語り尽くしましょう」と2人のAIエキスパートに声を掛けました。1人は電通総研のAIエンジニアである太田 真人さん、もう1人は北米市場に精通するUiPath Generative AI Solution Architectの隈元 大樹です。AIエキスパートである3人が、今、日本企業がAIエージェントをどのように活用すべきか、熱く知見を交わし合いました。
まず、AIエージェントとは一体どのように捉えるべきものか、太田さんの言葉を借りて押さえておきましょう。「『目的に向けて環境とやり取りしながらタスクをこなす知能システム』と考えるといいでしょう。環境というのは、社内のオフィスなりコンピュータなり、実世界の環境のことを指します。そこから知能であるLLM(Large language Models:大規模言語モデル)が情報を受け取り、思考して行動する、というサイクルを回していくイメージです」。
昨年末から、事業特化型でのAIエージェントの活用が広がってきており、今年はプロダクトが出てきて、検証していく年になると言います。「テック企業は今、AIエージェントの実用的なユースケースを血眼になって探しています」(太田さん)。
一方で太田さんは、今はまだすぐにAIエージェントに業務を置き換えられる段階ではないとも指摘し、「AIエージェントに企業の従業員の役割を代替させるとしたら、その点でまだ成熟しているとは言えません。LLMには人間のようなハイコンテクストなコミュニケーション力が不足しており、一から業務の進め方や考え方を教える必要があるのです」と話します。
株式会社電通総研X(クロス)イノベーション本部AIトランスフォーメーションセンターAIエンジニア太田 真人 氏
山崎が太田さんを招いたのは、ご本人のAIエージェントに関する知見と洞察の深さに感銘を受けたためでした。「『Weekly AI Agents News!』というAIエージェントに関するニュースや論文についての記事を毎週更新しているサイトがあり、とても関心を持って見ていたのですが、後にその運営者が太田さんと知りました。Xのダイレクトメッセージで連絡したところ、すぐに返事が来たのです」。
互いに面識はなく、「実際に会ってみたら、まだ20代の方ということに驚きました」と山崎は明かします。そんな太田さんは、「電通総研に入社してからとても自由に働かせていただいてきました。自由であるからこそ単に業務をこなすのではなく、何をすべきかを自分で考え仕事をしています」と、AIと向き合うスタンスを話します。
本日もう1人のゲスト、隈元は、UiPath本社で北米のビジネスディベロップメントに携わっており、山崎いわく「UiPathのエース」です。「北米で進展しているAIエージェントの最新事情に詳しい彼のナレッジを聞きたく、声を掛けました」(山崎)。
隈元によれば、北米ではすでにエンタープライズオートメーションでも、AIエージェントは実際に活用されているそうです。「特に、データの意味を人間のように捉えて処理する部分で活躍が目立ちます」(隈元)。
隈元は、現段階のAIエージェントのユースケースとして次の3つの領域を挙げ、北米でのビジネス活用の実例を含めて紹介してくれました。
「セマンティックデータ操作」
「自然言語処理」
「推論」
最初の「セマンティックデータ操作」とは、データや文脈の意味を理解してデータの操作をすること。AIエージェントはLLMをエンジンとして使うため、データの意味を把握しながら操作ができるのです。「事例として、セマンテック勘定科目分類エージェントを紹介します。これは財務取引をまとめるときにコード分類作業をするエージェントです。個別の取引の内容を理解して勘定科目ごとのコードをつける業務で、これまでは手作業が発生していました」(隈元)。
セマンティックデータ操作では、輸出入する商品を正しい関税分類表のコードで分類する「関税分類番分類エージェント」やクレジットカード会社の加盟店を分類する「加盟店カテゴリコード分類エージェント」などのユースケースが出てきています。「ルールベースではデータを分類したり、抽出・整形したりといった多くの作業が自動化できず、人手で行わざるを得ません。ところが、こうした作業をエージェントにして埋め込むと、既存の自動化プロセスのアセットを活かしながらエージェントを活用できます」と、隈元は説明します。
2つ目の「自然言語処理」の例としては、医療記録において専門的な用語の理解や検索などに人の作業が発生していました。そこで、カルテの内容を要約してシステムに入力するような作業をエージェントで代替したのです。
3つ目の「推論」では、エージェントが様々なデータベースやCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)システム、決算文書などからビジネスオポチュニティを探し、どのようなビジネス戦略を立てるのがよいかを提案してくれるような用途で検討が進んでいるといいます。
UiPathGenerative AI Solution Architect隈元 大樹
2025年、企業はどのようにAIエージェントと向き合えばよいのでしょうか。
太田さんは、まずは単一部署で完結する業務から取り組むことを勧めます。「複数部署がかかわる業務だと、業務プロセスの全体像の把握だけでも数カ月がかかります。単一部署ごとに社内の業務プロセスを捉えてAIエージェントを作り、AIエージェントの限界がわかるまで改良していく。これを今年の取り組みにするのがよいと思います」。業務プロセスを理解して個別の業務エージェントを作成し、慣れさせるところまでを経験しておくことで、LLMそのものの今後の進化に対応してAIエージェントの活用を深化させられるという考え方です。
「AIエージェントを企業の業務に組み込むときのポイントとは?」と、山崎は質問を投げ掛けました。
隈元は、「例えばロボットを導入して自動化したプロセスの中に、人間が介入するプロセスが少ながらずあるはずです。そうした“自動化が落ちている”部分にフォーカスして、エージェントを作るといいのではないでしょうか」と提案します。
これには太田さんも「ゼロからAIエージェントに業務を任せるとなると現場も対応に追われるので、自動化がある程度進んだ中で、ロボットが対応できない業務から始めるのはよいですね」と相槌を打ちます。
また隈元は、AIエージェントを取り入れるマインドセットの在り方についても助言します。「日本には保守的な会社が少なくありませんが、IT部門の若い方々などはAIで業務プロセスを変革したいという気持ちをお持ちの方も多いでしょう。まずは個人の業務プロセスをAI活用で変えてみて、その成果を発表するなどしてAIでプロセス変革するメリットを伝えるといった、“草の根活動”も大事だと思います」。
UiPathProduct Marketing Manager山崎 麟太郎
ところで、AI分野では生成AIやAIエージェントと、次々に新しいキーワードが登場しており、「世の中にある程度浸透してから腰を上げてもよいのではないか」、と考える人もおられるでしょう。この考えに対して、「なぜ今アクションが求められるのか」と、山崎が2人に問い掛けました。
太田さんは、「手遅れになってはいけない」と警告します。「今の技術が土台になって次のテクノロジーができ上がっていくわけですから、最新技術に現時点でアクションしておかないとのちのち後れを取ってしまうことになります。例えば生成AIにキャッチアップしていないのに、突然AIエージェントに取り組もうとしても、段階を踏んでいないから壁が高くなってしまうのです。『やらねばならない時にやる!』という心持ちが大事です」。
隈元も太田さんの考えに同意します。「AIエージェントでいえば、現時点では将来的にどう活かせるか、たしかに不明瞭な部分があります。ただしデータの分類や抽出の作業の自動化に適用することは今でも可能です。まずは短期的な目線で着手して、先のために準備をしておくことがオフィスワーカーに不可欠なマインドではないでしょうか」。
「少子高齢化社会において、今後は今よりも少ない人手で多くの業務をこなさなければならなくなるはずです。そのためには今の若い世代が10年、20年後に最新技術に精通した状態でいなければならないでしょう。将来のための目的意識を持ってAIエージェントを活用していけば、日本が北米のような先進国に後れを取ると思いません」(隈元)。
AIエージェントは、登場したばかりの技術です。それでも今できることから活用していくことで将来のための第一歩になると、3人はこれから取り組みを進める日本企業にエールを送りました。
関連情報
本件に関する詳細は、こちらのOn-demand webinarでご覧いただけます
Japan, UiPath
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