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この記事では、UiPath製品のユーザー インターフェイス(UI)がどのように日本語化されているかをご紹介します。製品の日本語化を開始した2018年当初から製品UIのローカリゼーション業務の一端を担ってきたのが、プロダクト トランスレーション(PT:Product Translation)チームです。すべてが混沌としていた最初期から現在まで、PTチームが数々の課題を乗り越えながら、どのように製品のローカリゼーションに取り組んできたかをお伝えしたいと思います。
ローカリゼーションとは、製品やドキュメントをターゲット市場の言語や文化に合わせて最適化することです。単純に英語から他の言語に置き換えるのではなく、ターゲット言語のユーザーがストレスなく製品やドキュメントを利用できるよう調整や工夫をします。たとえば、英語と日本語では日時の表示が異なるため、日本語版では日本向けの形式で表示されるように開発者が調整します。また、日本のユーザーが受け入れやすい文章のトーンに統一したり、原文を辞書どおりの意味に直訳するのではなく、より一般的で自然な訳語や言い回しを選択したりします。
PTチームは、チームを統括するプログラム マネージャー1名と、製品やドキュメントの翻訳を行うランゲージ スペシャリスト3名で構成されているとても小さなチームです。UiPathが提供している数多くの製品と付随ドキュメントのすべての文字列の日本語化を、たった3人で毎日コツコツ行っています。
PTチームの主な業務は、製品のUIとドキュメント ポータルの日本語化です。UIやリリース ノートなど、正確さとスピードが特に重要なコンテンツはすべてチーム内で翻訳し、分量が多いユーザー ガイドは外部の翻訳会社の力を借りて日本語化しています。製品の数はUiPathの成長とともに徐々に増え、2018年6月時点では4個だけだった日本語版コンポーネントは、いまでは25個以上に上ります! これだけの数の翻訳をするとなると一貫性を保つのも一苦労です。製品間で翻訳品質にばらつきがでないよう、用語集やスタイル ガイドの管理にも力を入れています。
ランゲージ スペシャリストの最優先の業務は、世界各地の開発拠点から毎週依頼されるUI文字列と、新しい製品やバージョンのリリースごとにドキュメント ポータルに公開されるリリース ノートの翻訳を週末までに完了させることです。翻訳管理システム(翻訳案件を一元管理するための専用ツール)を活用し、次のような流れで作業しています。
日本語化業務を開始した2018年は、業務の進め方などが何も決まっておらずすべてが手探りで、まさに黎明期と呼ぶにふさわしい状態でした。混沌とした日々を脱し効率的に業務が行えるようになるまでには、いろいろな工夫と努力を重ねてきました。これまで実施してきた翻訳業務の効率化にとどまらない改善策の一部をご紹介します。
初期段階では、さまざまな製品の翻訳の進捗管理をスプレッドシートで行っていました。しかし、製品が増えるごとに管理が煩雑になり、情報の見落としなどのミスが発生してしまいました。そんな状況を打破するために、課題管理ツールを活用することにしました。ツール内で作業ごとにチケットを作成して管理することで情報が整理され、進捗を確認しやすくなりました。また、一人あたり約10件担当するプロジェクトをスムーズに同時進行できるようになりました。
日本語化の開始当初から翻訳管理システムを使用していたものの、次のような課題がありました。
製品UI文字列の翻訳とユーザー ガイドの翻訳とで別々のツールを使用していたため、各ツールに蓄積された翻訳メモリ(過去の対訳データ)を活用できず、効率的な翻訳が行えなかった
翻訳管理システムでサポートされていない形式のファイル(プレゼンテーション スライドなど)の場合、原文ファイルのテキストを翻訳文で上書きする必要があり、作業に時間がかかっていた
現在は、通常の製品UIやユーザー ガイドの翻訳だけでなく、プレゼンテーション スライドや字幕翻訳などを含め、すべての翻訳作業を単一の翻訳管理システム内で行っています。 これにより、すべての翻訳作業で共通の翻訳メモリを活用して効率的に翻訳できるようになりました。
PTチームは3人という少人数で翻訳作業を行っているため、どうしても1人1人が専任で担当する業務が多くなります。以前は担当者が不在だと進まない業務があり、なかなか休みが取れませんでした。そこで、各人の業務が属人化しないよう、チームのあらゆる業務の手順を社内wikiに文書化し、担当者の不在時にも他のメンバーがストレスなく業務を代行できるようにしました。文書化した手順は定期的に見直して、常に最新の情報を共有するように心がけています。いつもの担当者以外のメンバーに作業してもらうと、業務プロセスの非効率な箇所や手順書の不備を指摘してもらえるため、手順を見直したりライティング技術を高めたりするきっかけにもなります。生産性を高める一方で安心して休暇を取れる体制も維持できるよう、日々業務プロセスの改善に努めています。
PTチームのメンバーは全員リモート環境で勤務しているため、コミュニケーションはすべてオンラインで行われています。社内チャット ツールは気軽にやりとりできて便利である一方、特定の相手にしか表示されないダイレクト メッセージを多用すると、状況説明のための「伝言ゲーム」が発生してしまうことがあります。また、いつでも気軽にやりとりができるため、複雑な作業に取り組んでいる最中にメッセージを受け取ると集中力が削がれてしまうという問題もありました。そこで、ストレスのない円滑なコミュニケーションを促進するため、状況に適したコミュニケーション ツール(メール、ビデオ会議、チャットなど)の使い分けについて、チーム独自のルールをいくつか定めました。たとえば次のようなものです。
「伝言ゲーム」の発生を最小限に抑え、チーム全体での情報共有がしやすくなるよう、チャットで業務に関するやりとりを行う場合は、ダイレクト メッセージではなく公開チャンネルを使う
特に集中が必要な作業を中断せずに済むよう、緊急ではない相談には回答期限を設けて、各自が都合のいい時間に回答できるよう配慮する
すぐに回答できないことを周りに示すため、チャット ツールのステータス アイコンに「集中」という絵文字を一時的に設定し通知を切る これらのルールのおかげで、チャットやメールに気を取られずに、密度の高い作業時間を確保できるようになりました。
UiPathでは、StudioXでオートメーションを開発できる市民開発者を育成するための社内教育プログラムが実施されています。PTチームの4人のうち2人が、そのプログラムに合格した市民開発者です。オートメーションの効果はみなさんも十分ご存知だとは思いますが、反復的な業務の自動化を行うことで、より創造的な業務に割ける時間を増やしています。
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RPAJapan, UiPath