2023年10月24日(火)、 25日(水)の2日間、AI搭載のオートメーションについて、発見と思索を深めるカンファレンス「UiPath FORWARD VI Japan」が、ANAインターコンチネンタルホテル東京およびオンライン配信で開催されました。生成AIがビジネスの現場に変化をもたらしている今、「AI at Work」をテーマに、日本を代表する企業の経営者やCIO/CDO、デジタル変革を担う責任者の方に講演をいただきました。当日の様子を、3回の記事にわたってお届けします。
オープニングでは、代表取締役CEO長谷川康一が登壇。「生成AIが日本のビジネスに浸透してきている今、それぞれの企業がこれまで利用してきた固有のシステムと、AIを活用した新しい自動化が融合することで、皆様の課題に応えていきたい」と意気込みを語りました。
続いて、2023年10月1日付で副社長に就任した南哲夫が登壇。「AI at Workでは我々が先頭を走っていることをご認識いただき、様々な企業様とのコラボレーションによって新しいソリューションを提供していきたい」と挨拶しました。
第1部ではUiPath導入企業から、業界を取り巻く状況や、自社のAIとオートメーション活用についての講演がありました。本記事では、三井住友カード株式会社での取り組みについてご紹介します。
三井住友カード株式会社 代表取締役社長 兼 最高執行役員 大西幸彦氏
クレジットカード業界をとりまく動きについて、大西氏はキャッシュレス決済が世界中で急速に広がっている状況を説明しました。5年前には24%だった普及率は、昨年36%まで拡大。市場規模で見ると、5年間で37兆円増加し、111兆円にも上ります。
とは言え、決済金額で見ればまだまだクレジットカードが主流。そのクレジットカードにも、新たな動きが見られると言います。「今、世界は決済の非接触化、タッチ決済の時代に突入しており、Visaカードにおいて、全世界の対面取引に占めるタッチ決済の利用比率は59%にも上ります。日本のタッチ決済比率は20%ですが、今後広がっていくと思われます」
三井住友カードでは、これまでにない新たなサービスの展開に力を入れています。
2023年3月、新サービス「Olive」を開始。こちらは、決済だけでなく銀行口座、証券、保険などを融合した全く新しいデジタルサービス。スタートから半年余りで120万口座を突破する大ヒットとなっています。大西氏は「Oliveをこれからの金融サービスのスタンダードにしたい」と語ります。 その他にも、オールインワン決済端末の普及や、企業のデジタル化をサポート。世の中のデジタル化を、決済から支える事業展開を進めています。
三井住友カードでは、2018年から自動化の開発に着手。2021年からは従業員による開発もスタートし、これまでに開発したワークフロー数は2,300本を越えます。大西氏は「RPA導入によって150万時間を削減し、人に換算すると800人以上に相当する大きな効果を上げました」と説明しました。
今回はその一例として、クレジットカードの入会申し込みフロー改革について説明しました。
クレジットカードの申し込みは、数年前までは紙での申し込みが主体でしたが、新型コロナウイルスの流行もあり、現在ではWEB申し込み比率が99,9%を占めています。最短5分の即時発行比率も50%近くなっており、その中で自動審査率を向上するため活躍しているのがRPAです。大西氏は「申し込み情報の明らかな誤りを判別して修正する作業や、既存のお客様が2枚目のカードをつくる際、新しい情報に更新する作業も自動化しました」と説明。これらにより、当初70%ほどだった自動審査率が、今年度には97%までに上がっているそうです。
大西氏は「新規の会員申し込み数は5年間で2倍以上になっていますが、審査にかかる人員は半分になるという劇的な効果を上げています」と語りました。
最後に、AIとオートメーションを組み合わせた活用例のご紹介がありました。社会問題にもなっているフィッシング詐欺。カード会社を語った偽のメールに騙されてカード情報を入力すると、犯人によって高額の買い物が行われてしまう、というものです。大西氏は「カード会社としては、犯人の不正な取引を検知して買い物を未然に防ぐことが必要ですが、幅広く対応してしまうと本人の買い物を止めてしまいます。いかに正確に、不正な取引だけを洗い出すかがポイントです」と対応の難しさを語ります。
そこで活用しているのが、DataRobotとUiPathを組み合わせた仕組み。三井住友カードでは、アメリカで流行り始めていたDataRobotを、日本の金融機関として初めて導入しました。まず、AIが膨大なカード明細を学習し、不正な取引を検知します。DataRobotが検知すると、RPAが業務システムに自動登録。このコンビネーションにより、不正発見の精度向上と、対応の迅速化を図っています。このほかにも、DataRobotとUiPathを組み合わせることで、顧客ごとの意向に合わせたパーソナライズドマーケティングにも活用しており、攻め・守りの両方で幅広く活用していると言います。
大西氏は「DX戦略は、スピーディー且つ大胆に具体化を進めて行けるかが肝心ですが、その際の判断軸は徹底したお客様視点。この視点にこだわり、健全なキャッシュレス社会の実現に向けて、役割を果たしていきたい」と結びました。
第2部の記事では、代表取締役CEOの長谷川康一、UiPath Co-Chief Executive OfficerのDaniel Dines、シニアディレクターでエンジニアのEdward Challis、SVP Test SuiteのGerd WeishaarによるUiPath Keynoteをお届けします。
→ 「UiPath FORWARD VI Japan」第2部 レポート:オートメーションはAIによってefficiency(効率性)からeffectiveness(効果)へ
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イベントJapan, UiPath
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