労働人口の減少や働き方の多様化、ビジネス環境における変化のスピードの加速などにより、企業は必要な労働力を迅速に確保することが困難な状況におかれています。さらに、デジタル化の進展によって業務で使用されるデータの量や種類は急増し、間接業務の肥大化も問題となっています。これは、かねてから指摘されていたホワイトカラー業務といわれる事務作業の生産性の低さが、労働力の減少によって露呈しているということもできるでしょう。デジタル化の時代に必要な労働力を確保するうえで、間接業務の生産性向上とスリム化は重要なテーマとなります。そして、その実現のために注目されているのが、RPAをはじめとする「デジタルワークフォース」という概念です。この流れは2016年頃より浸透してきましたが、さらに新型コロナウイルス感染症拡大を契機に、BCP(事業継続計画)に資する柔軟なシステム環境を実現する手段としても注目が集まっています。
このような背景のもと、ITR社は、企業活動におけるRPA導入の現状や、拡大展開に向けた課題などについて検証するホワイトペーパー『RPAによるデジタルワークフォースの拡張~ニューノーマル時代を見据えた活用・展開の要諦~』を制作しました。同社が実施した最新のRPAに関する調査(「RPA利用動向調査2020」)等の結果をもとに、デジタルワークフォースを取り巻く現状や、日本企業におけるRPA導入の効果と課題、そして拡大展開を成功させるために必要な対策について詳細に解説しています。
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ITR社のホワイトペーパー『RPAによるデジタルワークフォースの拡張~ニューノーマル時代を見据えた活用・展開の要諦~』によると、「デジタルワークフォース」とは、デジタル技術を活用して人の能力を拡張したり、人手作業の一部を代替させたりすることによって調達される労働力を指します。定義は諸説あるものの、構成要素としては主に次の5つがあげられるそうです。
(図1 デジタルワークフォースの主な構成要素)
なかでも注目度が高いのが、RPAによって実現される「オートメーション」、AIや機械学習・ビッグデータ・アナリティクスなどの技術によって実現される「インテリジェンス」の2つです。RPAは、これまで人間が行ってきた業務の自動化を実現するものであり、デジタルワークフォースを実現させる中核的テクノロジーとして認識されています。
同資料によると、日本でRPAが話題になるようになったのは2016年頃からで、当時は一部の製造業や情報通信業、金融機関など、限られた業界での利用でしたが、次第に幅広い企業で導入されるようになり、2019年に実施したITR社の「IT投資動向調査2020」では、導入率が20%を突破しました。
さらに、2020年に入り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で物理的な人の移動や活動が制限される中、RPAを活用して業務を継続させようという挑戦が国内外で始まると予想されています。特に海外の医療機関・金融・保険業でRPAが積極的に活用され、有用性が証明されています。非常時に発生する大量の業務処理に対してもその能力を発揮したことで、今後もRPAに対する期待は大きくなっていくでしょう。
では、国内企業におけるRPA導入の実態はどうなっているのでしょうか。同じくITR社のホワイトペーパー『RPAによるデジタルワークフォースの拡張~ニューノーマル時代を見据えた活用・展開の要諦~』から、調査結果を見ていきましょう。ITR社が2020年2月に実施した「RPA利用動向調査2020」によると、RPAの導入の目的で最も多かったのは「全社的な業務変革の実現」で、この回答を1位で選択した割合は45%に及びます。一方で、「人為ミスの削減」や「人手不足の解消」は副次的な目的として位置づけられていることがわかりました。
(図2 RPAの導入目的)
導入による効果も見ていきましょう。導入の実感度合いを項目別に質問したところ、10項目の中で最も強く効果を実感したのは「全社的な業務プロセスの改善」であるという結果が出ました。特に「部門・チーム単位の業務プロセスの改善」や「従業員個人の業務効率化」よりも全社的なプロセス改善に効果を強く感じているという点が特徴的で、導入目的と合わせても、全社的な業務改革がRPA導入と密接したテーマであるということがうかがえます。
(図3 RPAの導入効果)
さらに、RPAの導入規模と効果の関係性について見てみると、多くのロボットを運用している企業ほどRPA導入による効果の実感レベルが高いことがわかりました。多台数のロボットを運用すれば、自動化の適用範囲を拡大するとともに、複数業務を連携させて高度な自動化を実現することもできます。RPAの導入効果を高めるため、今後はRPA導入の大規模化・多台数化が進む可能性が高いことが考えられます。
(図4 ロボット稼働台数別に見るRPAの効果実感度)
RPAを導入済みの企業に対して今後の展開計画を質問したところ、8割以上の企業が「ロボット数や適用範囲を拡大する計画である」と回答し、多くの企業がRPAの拡大展開に前向きであることがわかりました。しかし、拡大展開が「計画通りに進んでいる」とした企業33%に対し、「思うように進んでいない」とした企業が49%と、大きく上回る結果となりました。
(図5 導入済み企業におけるRPAの展開計画)
その理由を質問したところ、拡大展開が不調と回答した企業では、「ロボットの開発ができる人材が不足している」「ロボットの運用管理ができる人材が不足している」と、人材不足に関わる項目が上位2つを占めました。この2項目は計画通りに拡大展開が進んでいる企業においても割合が高く、人材不足をはじめとした人的要因が、RPA導入企業に共通する課題であることがわかります。
(図6 RPAの拡大展開の阻害要因)
この課題を解決するポイントのひとつが、「ロボット開発がしやすいRPAツール」を選ぶことです。プログラミングのスキルを持たないビジネスユーザー向けの開発環境が強化されたツールであれば、現場のスタッフが手軽にロボットを作成できるため、初期開発の効率化を促すだけでなく、本稼働後の微修正や改善などをスムーズに実行することができるからです。
今回の調査でも、RPA選定で重視するポイントとして「IT技術者にとってロボットの開発がしやすい」「業務部門のスタッフにとってロボットの開発がしやすい」はいずれも上位にランクされています。
(図7 RPA選定において重視するポイント)
ビジネスのデジタル化が加速する中で、「デジタルワークフォース」の中核であるRPAはなくてはならない存在になるといえるでしょう。現に多くの国内企業がRPAを「全社規模の業務改革のためのツール」と位置付け、導入効果に対しても前向きな評価をしています。その一方でRPAの拡大展開には課題が残っていることも明らかになりました。
人材不足が叫ばれる現代において効果的なRPA導入を実現するには、誰にとっても使いやすいRPAを利用することでRPA開発・保守の「民主化」を進め、自動化環境の継続的な改善を可能にすることが重要だといえます。
UiPath社では、RPAを推進するCoE(Center of Excellence)やRPA開発者だけでなく、プログラミングの知識を持たないビジネスユーザーでも簡単に自動化が行える「StudioX」を販売しています。従来の「UiPath Studio」をより簡単に使えるよう、必要な機能だけに絞ったRPA開発ツールで、RPA開発者の不足が課題となっている中、プログラミングの知識が必要なく、今までより短時間の学習で開発ができるソリューションです。StudioXを利用することで、個別最適化された現場特有の業務も、ビジネスユーザーの手でより簡単に自動化することができます。
※StudioXの機能詳細は、2020年5月27日発行の下記プレスリリースをご参照ください。
(https://www.uipath.com/ja/newsroom/uipath-studiox-20200527)
なお、こちらのホワイトペーパーは下記よりダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。
(https://www.uipath.com/ja/solutions/whitepapers/itr-rpa-report)
以上
株式会社アイ・ティ・アール(ITR)について: https://www.itr.co.jp/
株式会社アイ・ティ・アールは、客観・中立を旨としたアナリストの活動をとおして、最新の情報技術(IT)を活かしたビジネスの成長とイノベーションの創出を支援する調査・コンサルティング企業です。戦略策定から、プロジェクトの側方支援、製品・サービスの選定に至るまで、豊富なデータとアナリストの知見に裏打ちされた的確なアドバイスを提供します。
Topics:
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)Japan, UiPath
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