お客様別府市

業種公共

地方アジア太平洋&日本

行政運営におけるデジタルファーストにRPAを活用

別府市 Main Image

生産年齢人口の減少は地方自治体にとって深刻な問題となっている。減少する人口とともに職員の数も減少傾向にある。しかしながら高齢化する地方では、市民サービスはこれまで以上に複雑化してきている。そうした現状を解決するべく、別府市ではデジタルを活用した「BEPPU × デジタルファースト宣言」を行った。ここでは行政運営におけるデジタルファーストにRPAを取り入れた活用事例について紹介する。

事例をPDFで読む

別府市 Case Study Body Image

【課題】職員数の減少と複雑化する市民サービスへの対応

別府市は大分県東部のほぼ中央に位置し、東に別府湾、西に鶴見岳と海と山に囲まれた風光明媚な観光名所として、さらに地底には九州を横断する2つの火山帯が走り、日本の総源泉数の約1割を占める温泉街である。その源泉の数は2,200ヶ所ほどにもおよび日本一の源泉数、湧出量を誇る。また、「別府八湯(はっとう)」と呼ばれる8つの温泉郷は、市内でも異なる泉質の温泉を堪能でき、毎年800万人以上の観光客が世界中から訪れる日本屈指の温泉都市である。しかし、人気観光都市の別府市でも他市に比べて緩やかではあるが、少子高齢化による生産年齢人口の減少は深刻な問題となってきている。

長野 恭紘市長は、別府市、および地方自治を取り巻く課題について次のように語った。 「現況として、生産年齢人口の減少とともに、職員の数も減少傾向にある。しかし市民が減少している一方で、一人暮らしの高齢者や、児童相談などの様々な問題・課題など、市民サービスはこれまで以上に複雑化してきている。速やかに可能な行政サービスをデジタル化して、本来人間が行わなければいけないマンパワーのところを人間に向ける施策が必要なのです。また、国では行政サービスのデジタル化に関する『デジタル手続法』を成立させており、地方であればあるほど、デジタル化を活用していかないと未来はない」

別府市 Case Study Body Image

別府市 市長 長野 恭紘 氏

【ソリューション】RPA開発の内製化を前提としたツール選びにUiPathを採用

別府市がRPAの検討を開始したのは、2018年8月のことだ。検討後すぐにPoC(Proof of Concept:概念実証)が開始され、「RPAとはどういうものか」、「シナリオ作成は容易に行えるのか」、「効果は見込めるのか」などに焦点が当てられた。これを別府市では、PoC第一段階と定義している。その後、PoC第二段階として庁内にRPAの対象業務がどの程度あるかの調査が行われ、結果、7つの課に対して「78業務」、年間作業時間は「5,783時間」にも及ぶRPA活用が可能な、潜在的な業務が存在したと別府市 企画部 情報推進課 課長 浜崎 真二氏は、当時を振り返って説明した。

また別府市では、RPA開発を委託業者に任せるのではなく、内製で行うことを基準に考えられた。その理由は外部委託にした場合、投資対効果がでるのかという点と、開発のノウハウが何も残らないという2点によるものだ。また、内製化により将来的には各職員が自分でシナリオ作成をすることを想定しているため、1から開発をしていく「プログラミング型RPA」ではなく、事前に用意されたテンプレートを組み合わせていく「設定型RPA」の方が適していると判断された。そのような条件の中、UiPathを選んだ理由について、浜崎氏は次のように語った。

「機能として、(Webページ上に直接表示されていないHTMLの属性データなども取得することができる)『データスクレイピング機能』は、市役所でよく使われる機能で、該当者を検索して一覧から対象の行を選択し、詳細情報を得る際に非常に有効であった。また、開発の内製化を前提としているため、セルフスタディ可能な『UiPathアカデミー』や、困ったときに聞ける『UiPathフォーラム』などの情報量の豊富さはUiPath選択の大きな決め手になった」

別府市 Case Study Body Image

別府市 企画部 情報推進課 課長 浜崎 真二 氏

【導入効果】15業務で1,078.2時間の削減と新たな市民サービスへの糸口へ

別府市では、2019年2月~4月までを試行期間と定め、保険年金課の業務を対象に業務の洗い出し、RPAのシナリオ作成、試行を順次行っていった。対象業務の年間作業時間は、15業務で1,265.3時間と試算され、この業務にRPAを活用することにより、職員の行う作業は、187.1時間に縮減され、削減時間は1,078.2時間となった。削減率でみると85.2%の定量的な削減効果となった。

また、市役所の業務では入力作業、確認作業といったものが数多く存在するが、窓口対応、電話対応で中断を余儀なくされることも多く、その為に作業効率の低下や入力ミスのリスクも抱えていた。そこへRPAを活用することによって、入力ミスを心配する職員の心理的ストレスの軽減や、その時間をRPAに作業を任せることによって、市民サービスへより真摯に向き合うことができる時間の創出ができたという定性的な効果も見られた。

長野市長は、RPAで効率化された時間に対しての考えについて次のように語った。 「車のハンドル操作で言えば遊びが必要です。心に余裕がないと新しいアイデアは生まれてこない。その余裕を生み出すのがRPAの価値で、目の前の仕事だけでなく、周りを俯瞰してみることによって、新たな市民サービスへのアイデアや問題解決をする糸口が見つかってくる」

【今後の展望】成功体験を積みながら全庁展開とデジタルファーストの実現へ

このような試行期間を経ていよいよ2019年5月よりRPAの本格導入を開始した。RPAの検討開始から外部に委託することなく、市職員の内製だけでわずか10ヵ月という期間でRPAの本格導入まで漕ぎつけた別府市は、2019年を先行導入期間と定義している。RPAの展開には、保険年金課、職員課、市民税課の3課を中心に、まずは成功体験を作ることを今期の目標としている。年内に3課で30~40業務のシナリオを作り、効果をさらに可視化した上で、次年度以降に全庁的に展開していきたいと浜崎氏は説明する。

別府市 Case Study Body Image

別府市 企画部 情報推進課 主事 田崎 直道 氏

また、内製にこだわる別府市においては、全庁展開に向けて開発者の育成も並行して行うべく、2019年下期には開発者育成のための研修も検討しているという。また、本格稼働の1ヶ月前、2019年4月からRPAを担当している別府市 企画部 情報推進課 主事 田崎 直道氏は、「UiPathアカデミーで学習しながら現行のシナリオの変更修正などを手掛けていますが、今後UiPathの学習ツールを活用しながら、1からシナリオ作成を実施したい」と開発の内製化に対して積極的に取り組んでいる。

そして、自治体に多い紙文化についてもAI-OCRを活用したペーパーレス化の実証実験を2019年下期に検討しているという。例えば、市役所で行われるインフルエンザの予防接種や集団検診では、保健師が2000~3000件の入力作業を業務の傍らで行っており、本来やるべき業務に加えて過剰労働となっているという。そのような紙からの入力作業をAI-OCRで文字認識し、RPAで入力業務を行うなど、一気通貫したデジタル化の計画にも余念がない。短期間でRPA化を成功に導いた別府市の「デジタルファースト宣言」は、確固たる実績とともに大きな変貌を遂げていくだろう。

事例をPDFで読む

関連事例

NTTドコモ

顧客事例

株式会社NTTドコモ
テスト自動化が支える、アプリ配信基盤のモダナイズ
顧客事例を読む
多摩市 Main Image

顧客事例

多摩市
市民とのコミュニケーションを促進するための業務改革
顧客事例を読む
南砺市 Main Image

顧客事例

南砺市
自律的な組織で更に市民に寄り添うサービスを
顧客事例を読む

貴社がお客様事例になる準備はできましたか?

知識豊富な専門家のチームと話し、RPAからどのような利益が得られるかご確認ください。