お客様株式会社リコー

業種製造

地方アジア太平洋&日本

プロセスマイニングで業務を可視化し改善へ。ロボット活用の次の一手に

株式会社リコー

市民開発の定着後に、プロセス可視化の必要性を実感

プロセスマイニングツールで、システムログから作業を可視化

人事システムの使われ方を可視化し、年間200時間以上の削減効果

スモールスタートに適したプロセスマイニングツールを選定。業務システムの効率化から製品・サービス改善にも拡大

リコーではUiPathのRPAを導入し、2018年から業務の自動化を推進している。ボトムアップの市民開発を主体に、現場の業務改善に効果を上げてきた。一方で、重複したロボットの開発や、既存業務をロボットに置き換えるだけの自動化など、業務プロセスそのものの改善につながらないという課題にも直面した。そこで、業務プロセスを変革するための実践から得た学びを整理・体系化した「プロセスDX」という型を開発し、継続的な改善活動に着手。プロセスマイニングを導入して、これまで見えてこなかった現場の作業の可視化から課題を発掘し、業務改善につなげている。

課題・解決策・効果

自動化の限界を超える業務プロセス変革へ。作業の可視化にプロセスマイニングを採用

リコーは『「はたらく」に歓びを』を企業理念の使命と目指す姿として掲げ、OAメーカーからデジタルサービス企業として、事業変革を進めている。そのための活動の1つとして、業務プロセス改革に取り組む。2018年にはUiPathのロボット製品を採用し、自動化による業務削減などの成果を上げてきた。

当時、ロボット製品の選定などに携わり、現在は社内DXの開発責任者を務める塩谷 晴久氏は、その後に見えてきた課題についてこう語る。

「ロボットの導入は、社員が自分たちの仕事を自分たちで改善するために市民開発を主眼にしたものです。成果が得られた半面、同じようなロボットが複数のセクションで作られたり、最適化されていないまま業務プロセスが自動化されたりする事態が起きてきました。そこで、2020年の後半から、プロセスDX活動が始まりました」。

塩谷氏

株式会社リコー デジタル戦略部 プロセス・IT・データ統括 ワークフロー革新センター プロセスDX開発室 室長 塩谷 晴久氏

プロセスDXとは、デジタル技術を導入して業務プロセスを変革する方法論としてリコーが命名したもの。プロセスDXの全体像は、「可視化」「最適化」「デジタル化」の3つのステップからなる。可視化のステップでは、「業務の可視化」、「業務モデリングと作業の可視化」を行う。可視化した業務に対して最適化のステップで「プロセスの最適化」を実施し、さらにRPAやAI(人工知能)の活用、ローコードなどの「デジタル活用」でデジタル化することによりハイパーオートメーションを実現する。

塩谷氏は、「業務や業務量の可視化を通じて優先順位の高いものから改善に取り組みます。作業の可視化のステップでは、国際標準の業務フロー図表記法であるBPMN(Business Process Model and Notation)を用いて、業務フローをモデリングしました。ここまでをプロセスDX推進室のビジネスアナリストが担当し、その後のデジタル化の部分をプロセスDX開発室で取り組みます」と説明する。

取り組みを進めていくと、BPMNだけでは作業の可視化がうまくいかないケースが現れた。「現場担当者へのヒアリングベースで、業務フローを表現していました。しかし、聞き取りでは大枠しか表現できず、例えばイレギュラーなケースや人によるばらつきなどを業務フローに表現することが難しかったのです」」(塩谷氏)。そこで、業務システムのログを使って可視化することで課題抽出ができる、プロセスマイニングの活用を検討することになった。

スライド画像

聞き取りをベースとした業務モデリングでは、人による作業のばらつきなどを表しきれなかったことから、リコーではプロセスマイニングの導入を決定。UiPathの製品を活用して、予算管理システム利用状況を分析して予算文書閲覧方法を見直すなど、さまざまな改善につなげている

機能に加えて導入のしやすさやコスト。将来の展開を考慮しUiPath製品を選定

プロセスマイニングツールの導入に当たって、リコーではUiPathを含む3社の製品を比較検討した。ワークフロー革新センター プロセスDX推進室 アナリティクスグループ グループリーダーの櫻井 陽一氏は、「グローバルで代表的なプロセスマイニングツールを比較しました。その中の1つにUiPathのProcess Miningがありました」と語る。

3社の製品の比較検討をスタートし、対応できるデータ量や機能に満足できる2製品に絞り込んだところ、「UiPathはオンプレミスとクラウド両方に対応していて、まずはオンプレミス利用を始めたい私たちにとって都合が良かったのです。また、スモールスタートで始めやすい料金設定で、コスト感が見合ったことも決め手の1つに挙げられます」(櫻井氏)。オンプレミスでの初期導入から、将来的に機能を拡充していくロードマップにUiPath製品の機能が合致したことも挙げられる。

櫻井氏

リコー  デジタル戦略部 プロセス・IT・データ統括 ワークフロー革新センター プロセスDX推進室 アナリティクスグループ グループリーダー 櫻井 陽一氏

オンプレミスでの提供にこだわったのは、導入までのスピード感だ。「新規のクラウドサービス利用の際には社内審査が必要な状況で、数カ月の時間がかかる恐れがありましたが、オンプレミスで使えるUiPath製品ならばすぐに利用を始められます。まずはミニマムで始めたかったので、小さなシステムでもプロセスマイニングの効果が得られるUiPath製品を選びました」(櫻井氏)。

そうしてUiPath Process Miningを導入したものの、すぐに使いこなせたわけではないという。塩谷氏は「UiPath Process Miningを導入して分析を始めたのですが、多くの分析グラフができ上がる一方で、必ずしも成果につながらない場面がありました。調べてみると、データ分析に詳しいメンバーがUiPath Process Miningを使って、個々のアクティビティに対する分析を深堀りしてしまっていたのです。本来のプロセスの分析よりも、多様なデータ分析手法を使うことに没頭してしまっていたためでした」と振り返る。

そこで、「仮説をプロセスでなぞらえて考えよう」と呼びかけることで、プロセスマイニングの考え方が浸透していき、成果につながるようになった。こうした反省を生かし、プロジェクトではプロセスマイニングの進め方を定義し、説明をしながら利用を広めている。プロセスマイニングに関しては、CoE主体で分析するケースもあり、市民開発とCoE開発のハイブリットのような形で進めている。

見えていなかったプロセスが見える化。システム改善から商品の改良にも広がる用途

実際、UiPath Process Miningを導入することで「これまで、システムで実行している作業が可視化できていなかったことが分かりました。システム開発側の想定とは違うという発見が多くあり、プロセスマイニングツールを導入した効果があったと感じています」(櫻井氏)。

プロセスマイニングで見えてきたことについて、ワークフロー革新センター プロセスDX推進室 アナリティクスグループの西村 拓氏は一例をこう説明する。

「経理の予算管理システムの利用方法として、一般的に想定するメインメニューから検索画面を経由して閲覧するフローとは異なり、Excelなどで管理しているURLを使って目的の予算文書を直接閲覧するフローが多くあることが分かりました」。

このシステムでは、検索、閲覧を繰り返すフローも見えてきた。これは、予算管理システムが複数の予算文書を同時に開けないために起こる作業だと分析した。塩谷氏は「予算管理システムを改善するよりも、BI(Business Intelligence)ツールなどで予算文書を一覧できるようにしていくことが理にかなっているだろうという課題抽出ができました」と語る。

櫻井氏は「プロセスマイニングでデータをちゃんと見ると、システムで使われていない機能の存在も把握できました」と続ける。塩谷氏も「IT部門ではシステムの利用状況などは肌感では理解していたでしょう。しかし、それでは改善に進めません。プロセスマイニングによって肌感を数値化できたことで、実際の行動に移せるようになりました」と語る。

プロセスマイニングの役割は「基本的には問題発見までです。すでに多くの問題が発見されており、すぐに対応できるものは改善につなげています。例えば、人事システムでは、これまでも問い合わせが多い操作プロセスがあったのですが、プロセスマイニングで問題を可視化して改善したところ、推定で年間208時間分の業務改善ができるポテンシャルがあることを算出できました」(西村氏)。

西村氏

リコー  デジタル戦略部 プロセス・IT・データ統括 ワークフロー革新センター プロセスDX推進室 アナリティクスグループ 西村 拓氏

プロセスマイニングの適用は、バックオフィス業務を統括する部門のシステム改善用途からスタートしたが、製品・サービス開発へのフィードバックにも使えるようになってきた。ECサイトの購買プロセスの可視化に適用し、ヘビーユーザーに見られる購買行動を把握することで、次なる施策を打つといった成果が上がっている。また、ある商品の使われ方の調査にプロセスマイニングを活用したところ、目玉として売り出していた機能が想定通り使われていないケースが見つかった。製品の使われ方からUI(User Interface)改善や顧客満足度の向上につなげる使い方として試行しており、こちらも目途が立っているという。

塩谷氏は「プロセスDXの活動では、業務のプロセスを管理することが必要ですが、UiPath Process Miningはプロセスを可視化できるモニタリングツールとして有効に機能しています。当初はオンプレミスで利用を始めましたが、クラウドサービスのUiPath Automation Cloudとして可視化から自動化、プロセスマイニングまで利用でき、プロセスDXとうまく組み合わせてハイパーオートメーション領域を強化していきたいと考えています」と語る。

櫻井氏は、「プロセスDXは、システムで業務をどれだけ効率化できるかがゴールであり、そこではプロセスマイニングツールがさらに大きな役割を果たしていくと考えています」と、今後のプロセス改革への貢献を期待する。塩谷氏は「AIの活用も視野に入れています。UiPath Document Understandingにより紙のデータをデジタル化すれば、紙から意図を理解できるようになります。その上でワークフローの中で自動化ロボットなどと協調して動くエージェントプログラムを開発できるUiPath Agent Builderなどを活用することで、業務プロセスがさらに改善できる可能性を感じています」と、UiPath製品群の今後の活用の広がり期待を寄せている。

リコー社の過去導入事例記事

https://www.uipath.com/ja/resources/automation-case-studies/ricoh

集合写真

「プロセスをデータから見たら想定と違うことが多くありました。業務自動化を間違った方向で進めないために、プロセスを可視化することはとても大切です」

株式会社リコー 

デジタル戦略部 プロセス・IT・データ統括

ワークフロー革新センター プロセスDX開発室 室長

塩谷 晴久氏

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