お客様出光興産株式会社

業種エネルギー・インフラ

地方アジア太平洋&日本

働き方改革の一環でのRPAの活用

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石油製品需要の中長期的な減退・気候変動問題の深刻化等の経営環境が厳しさを増す中で、出光興産と昭和シェル石油はエネルギー業界でのリーディングカンパニーを目指し経営統合を果たした。厳しい経営環境を乗り越えるだけでなく、事業のさらなる高度化を図るために最新のデジタル技術にも積極的だ。ここでは経営統合と同時期に進められたRPA導入の経緯と、RPAが同社にもたらしたさまざまな効果、さらには将来を見据えた先進的な取り組みを紹介する。

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【課題】RPAを活用した働き方改革で、厳しい経営環境に対抗

出光興産株式会社は、石油事業とエネルギーソリューション事業を柱とし、生活に欠かせないエネルギーを安全かつ安定的に供給する「エネルギー・ソリューションプロバイダー」である。2019年4月に出光興産と昭和シェル石油はそれぞれの強みと経営資源を結集し、屈指の競争力を有するリーディングカンパニーを作ることを志し経営統合を果たした。なお同社では出光興産株式会社という社名に加え「出光昭和シェル」というトレードネームを使用しており、「IDEMITSU」ブランドで約3,500カ所、「SHELL」ブランドで約3,000カ所のサービスステーションを全国で展開している。

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出光興産株式会社 情報システム部 部長 久保 知裕 氏

現在、国内のガソリン需要は販売量がピークだった2004年度を境に減少へ向かっている。2017年度のガソリン販売量はピーク時の84%程度まで落ち込んでおり、今後はさらに毎年2%以上のペースで減少していくとする予測もある。このような厳しい環境の中で経営統合した出光興産、昭和シェル石油の両社だが、統合に向けた交渉が行われている最中から、それぞれの情報システム部門が共に連携を図りながら「RPAを活用した働き方改革」を推進していた。情報システム部 部長の久保 知裕氏は次のように語る。「事業の成長にデジタル技術を使ってどうやって貢献できるか考えたとき、働き方を変える、プロセスを改革する、新しいビジネスモデルを提案するというレイヤーの中で、RPAは働き方を変える部分で有効なツールになると思いました。このため、出光、昭和シェルとも同じようなアプローチの下でRPAを使っていくことにしました」

【ソリューション】トータルで判断した出光、集中管理が決め手となった昭和シェル

経営統合前の旧昭和シェル石油と旧出光興産では、各社の情報システム部門が働き方改革の一環として、それぞれ独自にRPAの導入を検討していた。最終的にどちらもUiPathの導入を決めたものの、そこに至るアプローチは多少異なる。旧昭和シェルがUiPathに加えて日本国内で展開するRPAベンダー数社を同列で比較検討したのに対し、旧出光は初期段階からUiPathを中心に検討していた。システム企画課の高野 聡氏は「コスト、機能、日本の代理店や日本語サポートの有無、グローバルに使われているツールかどうかなど、トータルに判断した結果」だと語る。一方の旧昭和シェルでは、UiPath Orchestratorの「統合運用管理」が最終的な決め手になった。「Excelマクロの時代から野良ロボットで痛い目を見てきていたので、野良放置はさせたくない。集中管理できるツールが大きなポイントでした」(久保氏)

それぞれの会社でRPAの導入を始めたのは2017年の夏ごろ。働き方改革という同じ思いを持ち、経営統合を視野にいれて同じツールを導入した両社だが、実は導入のステップも異なっていた。旧昭和シェルがテストデータを使い、セントラルでコントロールしながら有効性を一歩ずつ確認したのに対し、旧出光はクライアント主導型。まずは情報システム部の中でPoCを行い、RPAの有効性を確認し、一部部店でのトライアルを行ったのだ。

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出光興産株式会社 情報システム部 システム企画課 高野 聡 氏

本格導入を決めた2018年からは、両社とも各部署でのヒアリングに力を注いだ。「20〜30回ほどの説明会を開催」(久保氏)したり、「全国の製油所や事業所を行脚」(高野氏)して、現場のニーズを拾い上げるよう努めた。ただしヒアリングでは、最初からRPAをアピールしたわけではないという。システム企画課 課長の重永岳雄氏によると、「『困っている業務はどれだけありますか』というところから始めて、ニーズを書き出してもらった上で、RPA化できる、できないを判断した」のだという。また、旧昭和シェルでは、情報システム部のスタンスも変更し、「要望があってもシステム化に至らなかった業務こそ、自動化させるチャンスがある」と問いかけた。(久保氏) 集まったニーズは、旧昭和シェルで300件、旧出光では600〜700件にも及び、それらの中からコストや効果、そもそもの必要性などを判断しながら、RPAの導入を進めていった。

【導入効果】58,000時間の削減に加えBPRとしての効果も

全社的な取り組みとしてRPAを取り入れた結果、本格導入から1年半ほどという短期間だったにもかかわらず、すでに58,000時間もの業務削減を達成している。ここでは特に効果が顕著だった千葉製油所の事例と、先進的な取り組みとして注目すべきAI-OCRとの連携事例を紹介する。

重永氏によると、「RPAとAI-OCR連携の本命は外からくる請求書」だという。情報システム部内での取り組みは評価的な意味合いが大きく、RPA×AI-OCRの有効性が確認されれば、これを「請求書の処理」のために全社的に展開していく予定だ。

なお同社では58,000時間という定量的な効果の他に、定性的な効果にも注目している。高野氏が指摘するのは、BPR的な要素だ。「情報システム部では『この業務はどうなっている?』といって手順書を起こしてから開発を進めるんですが、その過程で『そもそもこの業務はいらないんじゃないの』というケースも出てきます。RPAの導入によって、ロボット化ありきではなくビジネスプロセスそのものの見直しができること、トータル的なソリューションの提案ができることが大きな効果だと思っています」

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出光興産株式会社 情報システム部 システム企画課 課長 重永 岳雄 氏

【今後の展望】チャットボットの活用をはじめ、先進的な取り組みをさらに続ける

最新技術の活用に積極的な同社では、RPAとAI-OCRの連携活用だけでなく、さらにその先の高度なシステム化まで視野にいれている。それがチャットボットの活用だ。テキストや音声で自動的に会話を行うチャットボットをインターフェイスにし、その裏でロボットがトランザクションを実行するシステムを作ることができれば、誰でも業務システムの教育なしに業務システムを扱うことができる。「ユーザーとしては何かを叩いてやるということがなくなるので、UXのところでハードルが下がる。そういうアプローチも可能だろうと検討しています」(久保氏)

一方、喫緊の課題としては旧昭和シェルと旧出光の環境の統合が挙げられる。「両社の環境を統合的に管理できるシステムをどう構築するか、それを今年度の下期にやっていこうと思っています」(高野氏)。 経営統合という大きな局面を迎えたばかりの出光興産株式会社。まずは足元の環境をしっかり整えつつ、RPAをはじめとするデジタル技術によって業務の高度化を図ることにより、今後も業界を牽引する企業として発展を続けていくことであろう。

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