お客様伊藤忠商事株式会社

業種小売

地方アジア太平洋&日本

挑戦するDNAを発揮しRPAを活用 高付加価値業務への転換を図る

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大手総合商社の伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)は、中長期計画の中で「商いの次世代化」「スマート経営」「健康経営No.1企業」の3つを基本方針に掲げ、すべての領域において新技術を取り込み、ビジネスを進化させようとしている。そうした状況で、具体的な施策として同社が注目したのは定型業務を自動化するRPAの活用だ。ここでは、同社のRPA導入効果を中心に、成果を挙げるための取り組みも紹介する。

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Itochu Case Study Solution Overview 2

【課題】働き方改革の成功の次にくるのは限られた時間の有効活用

伊藤忠商事がRPAの導入を検討した背景には、2010年ごろから取り組んできた「働き方改革」が一定の成果を挙げ、次の一手を模索していた事情がある。IT企画部で部長を務める渡辺氏は、「朝型勤務制度が定着し、20時以降の残業が禁止となり、総労働時間は減った。すると今度は、『生産性を向上させ、限られた時間を高付加価値の業務に使おう』という議論に移った」と、当時の様子を振り返る。ちょうどその時期、同社の中期経営計画にある通り、新技術の取り込みが推奨されていた。「世の中で注目され始めていたRPAの検討は必然だった」とIT企画部の部長代行の五十嵐氏が言うように、2017年春ごろからIT企画部が主導してRPAの検討がスタートした。大手総合商社の伊藤忠商事では、ディビジョンカンパニー制度を採用しており7つのカンパニーが社内に存在する。カンパニー毎に営業業務も使用するシステムも異なるため、一足飛びにRPAの共通化と社内への横展開には難しさがあった。

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CIO補佐 (兼) IT企画部長 渡辺 一郎 氏

【ソリューション】導入の決め手は初期投資費用  スモールスタートを後押し

RPAの検討を始めて半年が経ったころ、IT企画部には、一部の業務での自動化には手ごたえを感じつつ、「投資に見合うだけの成果を得られるだろうか」と、不安の声もあったという。もう少し時間をかけてPoC(Proof of Concept:概念実証)を行う必要性を感じた五十嵐氏は、「やるならスモールスタートしかない」と判断。複数のRPA製品を比較検討した結果、初期投資費用を少なく抑えられて、一定の成果を見込めたUiPathの導入を決定。2017年10月、正式に同社のオフィシャルRPAツールに認定された。直ぐにいくつかのロボットを稼働させ、しばらくは試行錯誤を繰り返すことに。その間、ロボット開発者7名を育成。2018年4月には、満を持してRPAの全社展開のためのCOE(Center Of Excellence)をIT企画部の中に立ち上げ、RPAの推進を強化した。 

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IT企画部 IT企画部長代行 五十嵐 学 氏

【導入効果】導入から1年で69業務を自動化し、83ロボットを稼働

UiPathの本格稼働が始まり半年もすると、様々な部署で徐々に成果が現れた。2019年1月現在、稼働するロボットはカンパニー特有のものから共通化するものまで69業務、83ロボットにもなる。ここでは、RPA推進プロジェクトリーダー市橋氏の解説により、導入効果の一例を紹介する。

・情報収集の自動化Webサイトから1商品ごとの市況情報を取得して処理する作業をロボットで自動化。具体的には、取得した情報を基に閾値超過判定を行った後にExcelへ転記し、閾値を超過していれば担当者へメールを送信する作業までが自動化された。その結果、年間148時間に相当する作業の自動化に成功。併せて、それまで2商品しか情報収集できていなかったところ、ロボット化することで6商品の情報収集が可能に。また今後他にも40商品への展開の可能性もある。データの転記ミスが減るなど副次的な効果もみられた。

・出荷帳票処理の自動化客先から伝送受信するデータを基に出荷帳票を作成して印刷する作業を自動化。その結果、年間140時間に相当する作業の自動化に成功。繁忙期の作業時間を標準化でき、引継ぎ時の手間も軽減されるなど、こちらも副次的な効果がみられた。

・保険取扱い業務の自動化保険会社より保険金支払い予定データをメールで受領後、基幹システムに連携し、保険金支払通知書を出力。その後、各担当部署へ支払通知書と入金予定データを添付してメールを送信。この一連の処理を自動化。担当者の業務負荷軽減に成功した。

全ての事例に言えることは、業務が自動化されることで、社員が高付加価値の業務に注力することができるようになったこと。このような効果が積み重なることで、「しだいに『ロボットを導入したい』と手を挙げる部署が増えてきた」と市橋氏はいう。まさに「好循環に入った」といえる状況だ。「業務削減時間だけをみると大きなインパクトはない。しかし、今は実績作りが大切でノウハウを貯める段階」と、年間100ロボットの稼働を目標にCOEのメンバーはRPAの推進に取り組んでいる。

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IT企画部 業務イノベーション推進室 市橋 加代 氏

【今後の展望】導入期から拡大期へ  組織の壁を越え経営レベルの成果へ

 UiPathを本格稼働させてからわずか半年ほどで各部署がRPAの導入効果を徐々に上げ始めた背景には、COEの存在が欠かせない。COEが初めに行ったことは、「各部署の小さな業務を自動化させて実績を積み重ねる。その次に社内全体へ広め、最後は経営層に活用を促す」と、導入期・拡大期・成熟期の3段階に分けたRPAの成長モデルの作成だ。ここでは、導入期に行った活動の一端を紹介する。

・啓蒙活動ボトムアップが大切だと考えたCOEのメンバーは、各部署に「RPAとは何か」を地道に説明して周った。他部署の成果を伝えて動機づけしたり、ロボットが作業を自動化する様子の動画を見せたりと、様々なプロモーション活動を行い、RPAの認知を広めた。

・見える化イントラネットで各部署のロボット導入効果や利用者の声を公開し、情報の共有化を行った。各部署のロボット稼働状況を見える化した結果、部署間の競争心を刺激する結果となった。

・研修制度「RPAの利用を広めるためには、各部署にRPAに詳しい人が必要」という考えからRPAの研修制度を導入。必要とする人材を3段階に分け、「①RPAのために業務を整理できる人」「②RPAの保守ができる人」「③RPAを作成できる人」と、3つのコースを設けた。各コースは、修了課題をパスする必要があるなど、難易度がはそれなりに高い。「制度が普及するように」とRPA研修企画担当の清水氏は、修了者に「ロボットマスター」の称号を与えたり、オリジナルシールを発行したりすることで社員が楽しめる工夫をしている。

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IT企画部 業務イノベーション推進室 清水 琴音 氏

導入期・拡大期・成熟期に分けたRPA成長モデルの中で同社は、1年目を導入期に費やし、いよいよ本格的に拡大期へ入ろうとしている。「導入期は、個人業務の自動化が多くて一つ一つの効果は限定的」と考える師岡氏は、拡大期に入ることで、組織の壁を越えた共通業務の自動化やBIシステムとの連携を視野に入れ、さらなる飛躍を目指す。OCRと連携した自動化も検討中だ。その先にある成熟期では、AIやチャットボットなどの新技術を活用したRPAの実現を将来的な視野に入れている。

これらのことを実現するためには「各カンパニーにCOEを設けること。ロボットを作成できる人材を増やしたい」と、人材育成を市橋氏はこれからの課題に挙げた。

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IT企画部 業務イノベーション推進室長 師岡 晶政 氏

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