お客様ジヤトコ株式会社

業種製造

地方アジア太平洋&日本

R&D部門から全社展開へ円滑なシフトチェンジ。RPAを業務改革の力に

Jatco Main Image (ja-JP)
4年間で

20万時間

自動化による創出効果は4年間で延べ20万時間、さらに拡大中

ワークフロー開発

750

導入したワークフローは延べ750、1日に450のジョブが稼働

総開発者数

900人超

教育により総開発者数は992人に、テクニカルリーダーも約40人

経営陣・マネジメント層を巻き込み全社展開へ。人事評価にもデジタルスキルを組み込んで加速

自動車部品を製造するジヤトコは、R&D部門で製造業ならではの業務課題を抱えていた。煩雑な手作業を解消するためにRPAに着目、UiPathを導入した。一部で導入を始めたところ効果は大きく、RPA担当の専任チームを設立して、業務効率化の適用範囲を拡大。その後、全社の取り組みとして情報システム部に担当を移管しながら、ガバナンスや教育プログラム、人事評価制度の充実を図ってきた。RPAによる自動化は、今では全社の業務遂行に不可欠な存在となっている。

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課題・解決策・効果

製造業を悩ませるR&D現場特有の付随業務

自動車のオートマチックトランスミッション(AT/CVT)を主力製品とするジヤトコは、製造業ならではの業務上の課題を抱えていた。同社の現経営企画部課長補佐で、JEDS(JATCO ExcellentDevelop-ment System)推進部というRPA導入をリードした組織の立ち上げに関わった渡辺敏彦氏は、こう語る。

「モノを生み出すことが製造業の主業務ですが、それに付随する業務がたくさんあります。開発の工数管理はもちろん、1つのシステムだけでは完結できない管理業務が多く、手作業のコピー・アンド・ペーストを繰り返す必要のある付随業務は枚挙に暇がありません。当時はR&D部門に所属していたため、まさに付随業務の負担に直面していました」。

こうした業務を手作業から自動化したいと考えていたときに、「他社からRPAを紹介され、まずは現場で使ってみようと考えたのです」(渡辺氏)。

いくつかのRPAツールを比較検討した結果、渡辺氏はUiPathに目をつけた。特に決め手になったのはUiPathが対応するソフトやプログラムの幅広さだった。「R&D部門では、試験機器など様々な特殊な機器を使っているためRPAが機器付属ソフトを操作できないと効果が発揮できません。その点UiPathは、ほぼすべてのソフトやプログラムに幅広く対応できることが分かりました」(渡辺氏)。RPAツールとしてUiPathを導入したのは、2018年秋のことだった。

現在JEDS推進部の河合優氏は、別部署だった渡辺氏からRPAを紹介された。「当時、レガシーのデータベースから多くのデータを抽出して移行する必要があり、RPAが使えそうだと感じて取り組みに参加しました」。R&D部門の一部から小さくRPA利用が始まった。

開発の現場では、RPAの効果は着実に表れていった。日中は手作業でこなしていた業務を自動化できたことに加え、夜中に無人実行できるUnattended Robotsを活用することで、個人の業務PCを開かずともロボットをスケジュール実行することができ、翌朝までに必要なデータを準備しておくことが可能になった。データ処理業務が多いR&D部門では、みるみるうちに横展開が進んだ。

そこで渡辺氏は大きなチャレンジを仕掛ける。「他社のRPA活用状況を調べたところ、成功している企業には例外なくRPA専業のチームがあることが分かりました。RPAを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)で会社全体の効率化を目指すなら、専任とさせてほしいと1年目の最後に上申し、承認をもらいました」(渡辺氏)。

全社展開へ巧みにバトンをつなぐルール、教育プログラムを整備

そうして立ち上がったのがJEDS推進部である。渡辺氏と河合氏を中心とした3人で本格的にRPA活用を推進していった。RPA 化 し た い 業 務 を 募 集 し て、JEDS推進部で自動化ワークフローを着々と作り上げていく作業である。河合氏は「業務効率化が見込める大物の業務から狙い撃ちして自動化していくことで、創出効果が数字で毎月積み重なり、狙い通り多くの部署がRPAに興味を持つようになりました」と振り返る。

そうしたRPA活用の本格化段階でJEDS推進部が取り組んだのが、ガバナンスの整備だった。利用する部門ごとにワークフローを自律的に開発する「市民開発」を目指していたため、ルールの徹底が必要になってきたのだ。セキュリティや保守性の担保など、100ページを超えるルールができた。

次に訪れた転機は2022年春のことだった。JEDS推進部による顕著な成果を見た経営陣の判断で、自動化の取り組みを全社レベルに広げることを目的に、RPAの主担当をJEDS推進部から情報システム部に移管することになったのだ。当時、情報システム部に所属していた天野貴雄氏は、「全社でRPAを運用するための手法や最適化を検討することになりました」と語る。

情報システム部をサポートしながら全社のDXを推進するデジタルイノベーション推進部に所属していた鈴木伸重氏も、RPA推進の取り組みに加わった。

市民開発の体制としては、各部署の中にRPAに詳しいテクニカルリーダー(TL)を育てており、「テクニカルリーダーに権限を移譲して、情報システム部やデジタルイノベーション推進部に依存しない、自走できるRPA活用が目標です」と鈴木氏は語る。

各部署の人財活用を視野に入れ、教育プログラムも充実させてきた。「ガイドライン教育、UiPath Studio Xを使う初級講座、Studioを使う中級講座、そしてテクニカルリーダーを育成する上級講座の4つのプログラムを導入しています。すでに初級講座以上を受講してRPAの開発ができる人財は900人を超えています」(渡辺氏)。

自走できる開発体制の推進力となるテクニカルリーダーも2022年12月時点で38人にまで増えた。「各部署1人の目標に対して、半分ほどまで充足してきました」(天野氏)。

RPA導入の効果は大きい。「社内ではこれまで延べ750本のワークフローが開発され、(取材時点の)前日までに稼働したロボットは450台に上ります。こうしたロボットの稼働による創出時間は4年間で延べ20万時間に上ります」(鈴木氏)。創出時間は右肩上がりで伸びており、2022年度は1年で12万時間近くに達する見込みだ。

レガシーシステムに多額の投資をしてもシステム刷新に時間がかかり、業務効率化の効果がすぐには見込めない。RPAを活用しシステム連携すれば、速効の現実解となります

ジヤトコ株式会社 経営企画部 課長補佐 渡辺 敏彦氏

工数管理からレガシー連携まで仕事の在り方に革新的変化

具体的な活用事例の1つが工数管理である。従来は数十あるグループが手作業で工数管理データを作成し、部長に逐次でレポートしていた。しかし、レポートのフォーマットなどもバラバラだったという。

RPA化に伴い「ルールを見直した上でデータの格納の仕方や最終的なレポートのフォーマットも統一し、自動化することで週次でレポートできるようにしました」(渡辺氏)。河合氏は「自動化によりレポート作成作業が効率化できただけでなく、月に一度しか把握できなかった工数の状況を週次で確認できるようになり、遅延原因の究明や、前もっての納期・リソースの調整が迅速にできるようになりました」と効果を説明する。自動化を通して、「業務の整流化」を実現できた事例である。

このほかにも、実験用の設備や機器が吐き出す様々なフォーマットの生データを汎用のCSVなどに変換するワークフローも活躍している。変換作業には1時間、2時間とかかるものも多く、これらを夜中にロボットに処理させることで翌朝には自動的にデータができ上がる。

すぐには変えることができないレガシーシステムの業務改善の用途でもRPAが活躍する。「レガシーな経費処理システムと、サイボウズ社の業務改善プラットフォームであるkintone(キントーン)との連携を実現しました。入力補助やデータ分析は使い勝手がよいkintone上で人が行った上で、経費処理システムへの入力はロボットに実行させる仕組みです。手作業で1件1件入力していた業務が、格段に効率化できました」(鈴木氏)。社内では元々kintoneが広く使われており、RPAとkintoneの連携は多方面で効果を発揮している。

こうして750本のワークフローが生まれ、「質の高い開発や仕事ができるようになりました。ユーザー部門からは、『RPAなしではうちの業務が回らない』と言われています」(渡辺氏)。

さらに一般ユーザーからも、「QoL(生活の質)が上がった」「ロボットに任せて早く帰れるようになった」といった声が寄せられている。RPAが着々とジヤトコの仕事の在り方に変化をもたらしている。

経営トップ巻き込み活用を広げ全社規模の効率化、最適化へ

社内の評価体制にも手を入れてRPAの活用を後押しした。デジタルスキルを人事評価の項目として導入したのだ。「2021年度からコンピテンシーの1つとして、デジタルスキルを人事評価に含めてもらいました」(渡辺氏)。

これだけ社を挙げたRPA推進の体制と仕組みを整備できた背景には、トップの理解がある。ジヤトコの佐藤朋由・代表取締役社長兼CEOは号令を掛けるだけにとどまらず、「自らRPA教育を受けて、ワークフローを開発したことを社内に発信しました。おかげで、教育プログラムの受講者やロボット開発数が格段に増えました」(河合氏)。マネジメント層も自動化を積極的に後押しする。

さらに、RPAの市民開発の広がりは、ITリテラシーの向上やセキュリティ意識の向上にもつながっている。「RPA活用を通して各自が能動的に学ぶことが、全社的なIT教育の機会となっていることを実感します」(天野氏)。

次のステップとして、鈴木氏は「これまでは身近な業務の効率化を実現してきましたが、今後は業務の上流から下流にわたる全体の効率化、最適化が求められます。プロセス全体を俯瞰した上で効率化できるポイントを探すために、UiPathProcess Miningの導入を検討しています」と語る。

RPA先進企業として、天野氏は「ルールベースで動き、電子データを使うという2つの要件に合致する業務であればRPAは必ず使えます。近年は機械から出力されたデータも必ず電子化されているので、私達のような製造業はRPA活用に向いていると感じます」と語る。加えて、「とにかくいろいろなことができるのがロボットです。身の周りの面倒な作業はロボットに置き換えてしまいましょう」。この鈴木氏の考え方に、RPA活用のヒントが詰まっているようだ。

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