概要
NECマネジメントパートナー株式会社 ・日本電気株式会社
所在地:神奈川県川崎市中原区下沼部1753 NEC玉川事業場
NECグループのシェアードサービスセンターとして培ってきた業務プロセス構築力、システム適用・運用力、そして豊富な専門知識を持つ人材を数多く保有しているといった強みを活かし、BPOサービスやビジネスサービスとしてご提供することでお客さまの事業成長を支え、新たな事業価値の創造に貢献します。
働き方改革や労働者人口の減少を背景に、業務の効率化と生産性向上の重要性が近 年高まっているため、企業グループとしては共通する間接業務の集約による「グループ 全体の業務効率化」が急務となっている。NECマネジメントパートナー株式会社は NECグループ10万人の業務を支えるシェアードサービスセンターであり、こうした要請 に応えるため、業務プロセス改革の一環としてRPA導入に積極的に取り組んできた。
NECマネジメントパートナー株式会社 プロセス・IT統括事業部RPA推進センター シニアマネージャー 滝本 浩史 氏
NECマネジメントパートナー株式会社は、10万人規模のNECグループの中で、業務効率化のためにグループ内のバックオフィス業務機能を一括で担うシェアードサービス企業である。2014年度に5つのNECグループ会社が統合される形で発足し、共通の事務サービスなどを提供。2015年からはより高度なスタッフ業務をNEC及びNECグループ会社から集め、AIなど最新技術を使った新しいスタッフサービス、新しい価値を提供している。
またNECグループでは、販売費及び一般管理費(SGA)の削減を大きな目標のひとつに挙げているため、同社は、これまで数多くの業務効率化を達成してきた。また、そこで培った業務プロセス構築力、システム適用力や運用力、豊富な専門知識を持つ人材を活用し、NECグループ外のお客様へも提供するBPOサービスも行っている。既に一部のサービス分野では外販を始めているものの、「BPO事業」の拡大は同社が抱える経営課題の一つである。
こうした課題を解決するツールとして目を付けたのがRPAだ。働き方改革が推奨され、労働者人口が減少する世の中で、ロボットによってさまざまな間接業務を自動化できれば業務効率は劇的に上がる。またRPAの構築・運用に関するノウハウはBPO事業にも活用できる。とはいえ、初めからRPAありきではなかったとプロセス・IT統括事業部RPA推進センター シニアマネージャー滝本 浩史氏は語る。「間接業務の効率化という旗印で人や業務を集約したとき、世間ではちょうどRPA業界が成熟し始めていました。製品の品揃えが増えただけでなく、UIも洗練されてきましたしね。こうしたタイミングが重なり、RPA活用による業務効率化を積極的に推進する事が出来ました」
2016年、同社はRPA導入の検討を始めた。最初に目を付けたのは経理財務部門だったという。「経理財務はピーク時に業務が集中し、繁閑差が激しい部署だったので以前から『なんとかしたい』という想いを持っていました。加えて、先端技術に対する感度も高かったですね」(滝本氏)。始めはコンサルを入れて10〜20の業務でトライアルを行ない、その結果を受けて翌2017年に正式に最初のRPA導入が決まった。プロセス・IT統括事業部RPA推進センター マネージャーの小松崎 政人氏によると、当時は「経理領域や人事領域、マネジメントなどの間接業務で、繰り返し行われる作業にRPAの効果を感じた」という。
NECマネジメントパートナー株式会社 プロセス・IT統括事業部RPA推進センター マネージャー 小松崎 政人 氏
その後も同社では、RPAツールの利便性とその効果を周知するため社内への認知活動を積極的に行っている。「社内のイベントでRPAを中心としたツールを紹介し、実際にRPAを導入して恩恵を受けた社員にも事例について紹介してもらう等、RPAの便利さを告知しました」(小松崎氏)。とはいえ、やみくもにRPAを導入したわけではない。導入を希望する部署にはRPA推進センターがヒアリングを行い、業務プロセス改革を進める中で本当にRPAが必要かチェックしたうえで開発に着手したのだ。あくまでRPAは業務効率化の選択肢の一つであると滝本氏は強調する。
2018年11月には、それまで使っていたRPA製品に加えてUiPathも導入された。UiPath は、NECの基幹システムとして使われるSAPとの連携コンポーネントを豊富に揃えており、常に新しいRPAツールの評価を行なう同社の中で、UiPathとSAPの親和性が高いと評価され、導入に至った。その結果、現在同社ではUiPathを含む複数のRPAツールが並行して利用されている。「エンジニアの中には初期から使っている他社RPAの方が開発しやすいという人もいますが、そちらはSAPとの連携が不得意です。それぞれのRPAツールの得意分野を生かして効率を高めたいと考えています」(小松崎氏)。なお、「NECの統合運用管理ソフトウェアのRPA管理機能により、複数種にわたるロボットの実行・停止のスケジュール指定や管理、リアルタイムな障害検知によって安定運用を実現し、効率的な使い方を含め、稼働するロボット数の規模に応じて増加しやすいランニングコストや運用負荷を軽減しています」
2017年から導入されたRPAだが定量的な効果は初年度だけで、延べ15万時間の削減という大きな効果が得られた。しかし同社で特に際立っているのは、RPAを利用した担当者が肌で感じている数字には表れにくい定性的な効果だ。ここでは実際にRPAを使用しているユーザーから得られた、その効果について紹介する。
このように確実性、正確性が求められるバックオフィス業務において、RPAは業務を効率化すると同時に社員の心理的負担やストレスを軽減することで、より働きやすい環境へと変化している。
日本電気株式会社 AIプラットフォーム事業部 マネージャー 田中 聡吏 氏
今後の展開について同社では「数値目標はあまり全面に掲げ過ぎないようにしている」と滝本氏は語る。その理由としては、RPAはあくまで効率化を目的とした業務プロセス改革の手段であってそれ自体が目的ではないからだ。本来ならなくすべき業務を無理やりRPA化し、そのために費用が発生するのでは本末転倒になってしまう。2018年度中の取り組みによって同社内ではすでに多くのRPAによる自動化業務が相当数浸透しているため、今後はNECグループ全体でいかにRPAを浸透させていくかが課題となってきている。
さらにRPA導入拡大に向けた、新しい角度からの取り組みも始まっている。滝本氏は次のように語る。「RPAの導入は現在新たな局面に来ています。これまでは各ユーザー部門から上がってきた業務に対する、自動化の必要性を判断し、その上でオーダーメイドのロボットを開発していました。今後はどの部署でも使える汎用性の高いロボットを作り、広く使ってもらう方向に軸足を移しつつあります」
その他にもRPAの導入ノウハウを活用した外販ビジネスも行っている。NEC AIプラットフォーム事業部 マネージャー 田中 聡吏氏は次のように話す。「RPA事業拡大の一環として、NECマネジメントパートナーで活用しているRPA導入のノウハウをお客さまに還元していきます。そのツールのひとつがUiPathです。RPAに関連したプロダクトセールスと運用サービスを併せて提供し、社内で培った汎用性の高いロボットを展開することで多くの企業がロボットと共に働く未来を推進します」。そのための課題として「まずは社内でRPAの認知度を上げることが当面の課題」と語る田中氏。RPAの中でも特に知名度が高く、業務への適用範囲が広いUiPathは、この点で非常に活用しやすいという。
業務効率化のツールとしてRPAを活用しながら、巨大グループ全体の業務改善を目指すNECマネジメントパートナー株式会社。近い将来、RPAを武器にグループの垣根を飛び超えて、より幅広い業界の中でも活躍していくことであろう。