あらゆるデバイス環境で意図した アプリのUXと機能性を実現
網羅的かつ自動的なテストの 実行により手戻りを最小化
テストプロセスの自動化が アジャイル開発のさらなる推進に貢献
概要
オーケー株式会社
所在地:〒220-8755 神奈川県横浜市西区みなとみらい6 - 3 - 6
一都三県を中心に、130店舗のディスカウント・スーパーマーケットを展開。「高品質・ Everyday Low Price」を経営方針掲げ、常に高品質かつ低価格な品揃えと”かゆいところに手が届く”接客 により、変化する顧客ニーズに正対した店舗づくりを推進。チェーンストアの原理原則に縛られることなく各店舗が裁量を持ち、地域特性に合わせたサービスを提供し、躍進を遂げている。
高品質かつ低価格な品揃えと地域に密着したディスカウント・スーパーマーケットの展開により、消費者から高い支持を得るオーケー。同社は2021年10月、DX推進の一環として、顧客がPCやスマートフォン上で買い物を楽しめるネットスーパーを開設した。リアル店舗と同様に顧客志向を徹底し、顧客の多様なデバイス環境におけるUX(顧客体験)や機能性を極めていく中で、受け入れテストの工数が肥大化するという問題に直面。そこで、同社はUiPath Test Suiteを導入することによりテストの自動化に取り組んだ。アプリケーション品質を担保しつつ、アジャイル開発を円滑に実践する体制を整え、顧客に新たな価値を提供し続けている。
一都三県を中心にディスカウント・スーパーマーケットを展開するオーケー。「高品質・Everyday Low Price」をスローガンに掲げ、特売日を設けることなく、ナショナルブランド商品の地域最安値を目指して販売するという戦略によって、消費者から大きな支持を獲得。2009年末に55だった店舗数は現在130を数え、差別化が難しいといわれるスーパーマーケット業界のなかで着実にファンの心を掴み、急成長を続けている。
同社はスーパーマーケット業界にも急展開で押し寄せているDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応も進めている。その大きな取り組みの1つが、2021年10月に満を持してオープンしたネットスーパーである。ネットスーパーのECサイトにおいても、こだわるのはリアル店舗と同等以上のUX(顧客体験)だ。高品質、ロープライスの方針に基づく商品提供はもちろんのこと、他店への乗り換えが比較的容易なネットでは一層の工夫が必要になる。
「時代の要請に応じた価値をお客様に提供し続けていきたいと思っています。高齢のお客様であれば来店や購入商品の持ち運びが負担になりますが、そうした手間をネット上でどのように代替するのがよいかなど、我々の提供できる価値について常に考え続けなければなりません」とオーケーの田中覚氏は語る。
ネットスーパーの背景にはオーケーが推進するDXがある。そこで念頭に置かれているのは、IT活用にかかわる運用コストのさらなる低減や、ビジネス環境の変化へのスピーディな対応である。現状オンプレミス環境で運用している基幹システムのクラウド化やマイクロサービス化といった取り組みを進める一方で、システム構築についてもウォーターフォール型ではなく、設計・開発・テスト・改善の一連のサイクルを短期間で繰り返すアジャイル型のアプローチを採用。短サイクルで確実に成果を積み上げながらROIを担保するというスタイルを目指している。
ネットスーパーにかかわるシステム構築においても、上記のアプローチを採用する前提でスタートが切られた。ところが、ECサイト開発の実践において1つの懸念点が浮上した。それはテスト工数、とりわけ外部ベンダーからのプログラム成果物をチェックする受け入れテストの工数増大である。というのも、ネットスーパーのような消費者向けサービスの場合、社内向けシステムとは異なり、ユーザーの利用環境は多岐にわたる。スマートフォンのOSとしては iOSとAndroid OSの両環境での検証が必要なことに加え、ブラウザにおいてはChrome、EdgeのみならずFirefox、IEなどより多様な利用環境を想定する必要がある。
「我々の提供するECサイトがいずれの環境でも問題なく動作するのは当然のことであり、我々の想定するUXも等しく提供されなければなりません。しかし、そのためには利用環境の多彩なパターンに応じたテストの実施が不可欠です。さらに、初期の立ち上げ時だけではなく、サービス開始後にもアジャイル型のアプローチによって短サイクルでリリースを繰り返していくことを考えると、一般的な社内システムと比べてテスト工数は何倍にも膨らむだろうことは見えていました」と、田中氏は当時の見通しを振り返る。
テストの工数をめぐる課題に直面したオーケーは、市場に投入されているテスト自動化ツールに着目した。いくつかの製品のベンダーからデモや説明を受けながら検討を進めた結果、同社が導入することにしたのが「UiPath Test Suite」(以降「Test Suite」とする)だった。
決定に際しては、自動化ツールに関してRPA製品で市場のリーダー的存在と目されるUiPathに対する信頼感はあったという。ただし、テストの自動化ツールとなるとどうか。実運用に耐えうるものでなければ、当然ながら採用に至るわけではない。「TestSuiteはGUIベースでの直感的な使いこなしができる一方で、テストシナリオの作成から実施、結果の確認に至るプロセスが綿密に設計されていました。まさに本格的なテストツールであると評価し、2020年12月から1カ月程度のPoC(Proof of Concept)を経て、正式導入に踏み切りました」と田中氏は語る。
こうして同社は2021年2月以降、ネットスーパーのシステム構築プロジェクトにTest Suiteを適用。このツールによって、ECアプリケーション開発を担当する外部ベンダーからプログラムの成果物を受け入れる際のテストを自動化した。「アプリケーションに実装されたロジックやデータの正当性チェックに加えて、例えばサイトに掲載されるべき画像や商品説明の欠落といった運用面における不具合検出に大いに役立っています」と話すのはオーケーの長岡雅之氏である。
Test Suiteの導入効果は明らかだった。「Test Suiteがなければ、そもそもECサイト構築は計画通りに実現できなかったというのが正直な感覚です」と、田中氏と長岡氏は口を揃える。週に何回もあるプログラム更新時のテストを自動化し、アジャイルによる開発・検証のサイクルや不具合修正によるリリースをスピーディに回すことができなかったとしたら、サイトのオープンにこぎ着けるのは難しかったというわけだ。自動化によって担当者はシステム面の不安から解放され、使い勝手や本来の業務的な問題点に対してのみ集中してチェックすることができるようになった。例えば商品情報の入力漏れなど、顧客向けの機能リリースにおいてチェックしなければならない項目のテストが、担当者の負担増なしに何度でも繰り返すことができる。受け入れテストの体制強化のために想定していた3人ほどの増員が不要になったことも想定以上の効果と言えるだろう。
開発ベンダーに対して、早期にテスト結果のフィードバックが行えることのメリットも大きかった。「フィードバックを受けたベンダー側も、開発直後のいわば”ホットな状態”で円滑に改修作業に入ることができるわけです。また、当社とベンダーの間で仕様理解の齟齬があったとしても速やかに明確化でき、迅速な課題解決が可能です。そうしたことが開発における手戻りの最小化につながり、開発生産性の向上に大いに貢献しています」と長岡氏は喜ぶ。
自動化の恩恵として、テストの正確性の担保が開発プロセスに大きな安心感をもたらしたのはもちろんである。「人力のテストでは時間短縮に限界があるうえ、慣れによる見落としがどうしても発生するのです」と田中氏は指摘する。人手によるテストでは、例えばある修正をプログラムに加えた際の影響範囲を担当者が頭の中で想定してしまうがために、品質上の問題が積み残されてしまうことがある。これに対して、ツールによってテストが自動化されていれば、毎回のテストで全てのテストシナリオを実行することも可能となるためテスト漏れの問題も確実に解消できる。
こうして開設に至ったオーケーのネットスーパーは、テスト自動化を組み込んだ開発プロセスによって支えられ、オープン直後から同社の顧客の日常に高い利便性をもたらしている。
アジャイルなアプローチを軸にサービスの継続的改善を目指す場合、テストプロセスを自動化するツールの採用は費用対効果の高い、きわめて理にかなった投資だと考えます。
オーケー株式会社 執行役員 IT本部 本部長 田中 覚 氏
前述の通り、オーケーはカットオーバーしたシステムの運用を通して浮上するであろう問題点や、市場環境の変化に応じた仕様変更などに対してアジャイル的な開発プロセスにより継続的に改良を行っていくことになる。そこで有効なCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を実現する仕組みとして、Web型のGitリポジトリマネージャーであるGitLabを活用した開発管理の体制も整えつつある。「例えば、開発ベンダー側で開発が終わった成果物がリポジトリにプッシュされると、瞬時にTest Suiteが起動されて必要なテストが自動実行され、その結果がベンダー側に返されるといったことも可能になります。今後、そうしたさらに高度な自動化の仕組みを取り入れて開発プロセスの改善を図りたい」と長岡氏は語る。
Test Suiteの活用領域は、オンプレミスの基幹システムをクラウド化する場面にも広がる見通しだ。オーケーでは、基幹システムの機能をクラウド上の多数のマイクロサービスに分割して徐々に置き換えていく形でクラウドシフトを進める方針である。田中氏は、その際のテストを開発者ではなく、ロボットに任せることでアジャイル開発やDXが加速されると見ている。
一方、同社ではIT部門のあるべき姿についても変革を進めている。部員を業務の現場に派遣し、自社の業務に対する理解を深めさせるといった取り組みはその一例である。つまりは、業務現場からの求めに応じて要件をヒアリングし、システムを構築していくとい“守りのIT“のスタンスを脱却し、現場に最適なソリューションをプロアクティブに提案できるような”攻めのIT”の体制の実現を目指しているわけだ。IT部門にとって、業務プロセスの理解および可視化は重要な業務のひとつであるが、「UiPathが提供するProcess MiningやTask Miningなどのツールも強力な味方になるはず」と田中氏は期待する。
「現場の業務をしっかり理解してさえいれば、最適なテストケースを自分たちで設計できるようになります。そこにTest Suiteによるテスト自動化のシナジーが加わり、システムの品質や提供スピードの向上につながるはずです」と、田中氏は変革の意義とテスト自動化の効果を強調する。Test Suiteは、今後のオーケーにおけるDX推進へ向けて、欠かすことのできないツールとして位置づけられている。