お客様帝人株式会社

業種製造

地方アジア太平洋&日本

全社レベルでRPA化を推進し働き方そのものを変えていく

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2018年に創立100周年を迎えた化学業界大手の帝人株式会社(以下、帝人)は「マテリアル」「ヘルスケア」、そして「IT」の3つの領域でグローバルに事業を展開し、連結売上高8,350億円、従業員数2万名弱の規模を誇る。同社は2018年4月にRPA推進のための組織を設け、業務改革の一環としてRPA化への取り組みを開始した。2021年度までの3年間で約300業務にRPAを導入し、年10万時間相当の人手による作業をRPAに置き換えることを目指す。

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Teijin Case Study Solution Overview

全社の業務改革の一環を担うRPA推進班

「帝人は新しいものが好きなんです。金融業界を中心にRPAが話題になった頃から、製造業でも使えるはずだと考えてRPA化に取り組み始めました」と語るのは、同社の情報戦略管掌補佐 業務革新担当RPA推進班の班長 唐澤利武氏だ。唐澤氏は2018年4月のRPA推進班の発足と同時に班長に就任した。

班の名前は「RPA」だが、RPAの専任というわけではない。「組織のミッションは業務の生産性を向上させることで、業務分掌は全社の業務改革を推進すること全般」(唐澤氏)にわたる。RPAは業務の生産性を高めるツールのひとつで、ワークフローなどにも同時に取り組む。同社のデジタルトランスフォーメーションを推進する「スマートプロジェクト推進班」や人事総務部門で働き方改革を推進する「ワークライフ変革推進グループ 」とも定期的にミーティングを持ち、全社の業務改革という視点から密に連携。業務改革の活動を全社レベルに展開して大きな成果につなげていくことが期待されている。

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情報戦略管掌補佐 業務革新担当 RPA推進班 班長 唐澤 利武氏

経理・財務、人事・総務の17業務でRPAの導入

同社がRPAへの取り組みを開始したのは2017年7月だ。まず情報システム部門で現状の調査を行い、2018年1月には、導入のコンサルティングをRPA分野に精通したパーソル プロセス&テクノロジー株式会社に委託。協力が得やすい経理・財務部門、人事・総務部門にヒアリングを行って、RPA化の第一弾となる業務をピックアップした。

「外部にコンサルティングをお願いしたのは、当社にRPA分野のノウハウがなかったからです。コンサルタントの指導のもとで経理・財務領域、人事・総務領域の業務内容を洗い出し、RPA化の導入効果が大きいと想定されるものからロボットを開発して導入していきました」(唐澤氏)

2018年1月末に各部門の担当者を対象に説明会を行い、現場でRPA化したい業務を募集したところ、200業務以上が候補として挙がった。約2ヶ月かけてそれぞれの業務内容を洗い出し、17業務に絞り込んだ。対象となった業務は、労働時間管理に関するメール配信、滞留債権の入金消込処理、社宅や社員寮の入退出申請処理などだ。外貨で入金された売掛金の円転などにもロボットを導入。

最初のロボットが稼働を開始したのが6月末。8月には17業務のプロセスすべてにロボットが導入され、現在2体のロボットで25のワークフローが稼働している。

様々なシステムとの親和性の高さが決め手

同社では導入するRPA製品の検討も進められ、当時はまだそれほど知名度がなかった「UiPath」が選定された。 決め手となったのは、UiPath Orchestratorが提供する強力な管理機能と、既存の各種システムとの親和性の高さだ。会計システムや人事システムなどメインフレーム系の基幹システムとの接続テストの結果も良好だった。

6月に情報システム子会社からRPA推進班に加わり、RPA化の企画を担当する髙須賀尚喜氏は「人事や会計の業務の多くは、基幹システムからデータを抽出して加工し、次のプロセスに渡すというもので、UiPathが大きな効果を上げることができます」と話す。

取引先コードの改廃を申請する窓口業務は、詳細なマニュアル化がされておらず、作業品質がバラバラだったが、ロボット化により品質が高められ、工数も月60時間から12時間へと80%削減された。さらに、「ミスを発生させてはならないというストレスからの解放も大きなメリット」と髙須賀氏は指摘する。

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RPA推進班 髙須賀 尚喜氏

年間10万時間相当の効率化が可能

当初想定した17業務については8月にRPA化が完了した。イレギュラー処理や紙ベースの処理、何らかの判断が求められる部分は、人が必要に応じて介在する。 

「本格的な稼働からそれほど時間が経っていませんが、現時点でも年間3,000時間以上の削減効果が見込まれていますし、各部門の担当者からは『次の開発予定はいつなのか』と質問が来ています。現場では期待以上の効果が出ているのではないでしょうか」(唐澤氏)。

次の段階として想定されているのは、マテリアルやヘルスケアといった各事業部門へのロボットの導入だ。スタッフ部門ではなく、現業部門への適用だけに、効果は売上や利益にもダイレクトに影響してくる。

「実験的に協力してくれる部署で対象となる業務の洗い出しを始めたところです。年末までに20くらいの業務にロボットを導入することを想定しています。業務処理の詳細を見ると共通する処理も多いので、RPA化の効果は大きいでしょう」(髙須賀氏)。

現在同社が目標としているのは、毎年100業務のRPA化を進め、2021年度に300業務にロボットを導入することだ。「約10万時間相当の業務をロボットにシフトすることができると想定しています」と唐澤氏。 

“デジタル人事部”というユニークな構想

現時点でのRPA推進班は、RPA以外のツールによる生産性向上に取り組む担当者やアシスタントも含めて6名で構成されている。今後の展開には人手が足りないため、スタッフの増員を計画中だ。

全社レベルでRPA化を推進する人材について唐澤氏は「業務の現状を聞いて、どうRPA化するのかが描ける人です。もちろん、システムを理解していなければなりません。そこに業務改革を推進できる、業務現場の人と一緒にやれる人が加わるのが理想」と話す。

またメインフレーム畑出身の髙須賀氏は「ロボットが増えると管理が大変になります。管理の仕方は大きなシステムと同じですから、インフラやジョブの管理を経験してきた人がよいのでは」と指摘する。

同社ではOCRやAIの活用にも積極的に取り組んでいく予定だ。「特にOCRによるデジタル化は大きな課題です。手書きの情報やFAXで送られてくる注文書などは相当なボリュームがあります。これらをロボットが扱えるようになれば、業務効率は大きく改善されます。AIを絡めてぜひ実現させたいです」(唐澤氏)。

唐澤氏は、ロボットが増えた後についてもユニークな構想を描いている。それは“デジタル人事部”で、ロボットが、ロボットだけでなくITシステムの管理やメンテナンスを自律的に行う世界だ。

「ロボットは24時間365日働くことができますが、業務処理は月次や週次に集中します。他の時間はITシステムの管理などを行わせ、ロボットが暇にならないようにする。指示されて働くデジタルレイバーではなく、仕組みで動くデジタルワークフォースを推進していきます」と唐澤氏。同社のRPA戦略の今後か楽しみだ。

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